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遅いな……。 部室に残った真紅は戻ってこない、翠星石にいたっては昼休みから見てないし、2人ともどうしたんだろ? 僕はそう思いながらチラッと隣の席と後ろにある席を見る。 いつもなら金髪をツインテールにしている真紅と栗色の長い髪を退屈そうに指でもてあそぶ翠星石の姿があるのに、今は2人ともいない。 チョークが黒板に文字を書くたびにコツコツっと単的な音が教室に響く、その音を聞いているとなぜか僕の胸には不安の色が濃く浮かび上がった。 「えぇ~、真紅も翠星石も授業に出てないかしら~?」 「えっ、じゃ、水銀燈もいないのか?」 結局あれから真紅と翠星石は教室に帰ってこなかった。 それどころか水銀燈まで姿を見せていないようだ。 僕がそれを知ったのは午後の授業が終わり掃除をしているときに隣の教室から不安そうな顔付きで表れた金糸雀と話してからだった。 「もう、カナをほったらかしにして3人で何をヤッてるかしらぁ?」 「電話はどうなんだ?繋がるのか?」 「ダ、ダメかしらぁ~、みんな留守電になってるかしらぁぁ~」 「そうなのか……」 留守電に金糸雀のメッセージが入っている頃、水銀燈は制服の上にライダースのジャケットを着てZX-10Rに乗り、有栖川総合病院の駐車場にいた。 「ふぅ、さすがにこの季節になるとバイクはツライわねぇ~」 フゥ~っと白い息を凍えた手に吹きかけると、10階にある病室の窓を見る。 そしてZX-10Rのとなりに止まっている青いスカイラインGT-Rをチラッと確認し、ジャケットのポケットに手を入れると病院の中に入っていく。 「こんにちはぁ~~」 「あぁ、水銀燈、いらっしゃい」 ベッドで人形のように眠る1人の少女、その脇にめぐはいた。 ブルーRと呼ばれロックバンドENJUのヴォーカリスト、めぐ。 彼女と水銀燈は数ヶ月前までは犬猿の仲であり、深夜の高速で壮絶なバトルを繰り広げたこともあった。 しかし、めぐは水銀燈がスピードの中にある音楽、風が導いてくれる最上のフレーズを探して走っていることを知り、今こうしてベッドから目を覚ますことのない妹、薔薇水晶の影を水銀燈の中に見た。 そして水銀燈も妹を廃人にまで追い込んだバイクという乗り物に復習するかのように走るめぐの心境を知り、こうして何度か目覚めない薔薇水晶のお見舞いに顔を出していた。 「今日はどうしたの?水銀燈」 「まぁ、なんとなくよぉ~」 「ふふ、水銀燈は毎回ここに来る理由は何となくなんだね」 クスッと笑っためぐの笑顔にはもうあの頃のような冷たい笑みではなく、自然で優しい微笑みであった。 そんな微笑に水銀燈もニコッと笑った後、すこし切り出しにくそうに口を開く。 「ねぇ、めぐぅ…ちょっと聞きたいんだけどぉ、ENJUってギターもう一人くらい入れるのぉ~?」 「えっ!? どういう意味? ローゼンメイデンはどうしたの?」 「フフッ、何となく聞いただけよぉ、深い意味はないわぁ~、ただタマには違うバンドで音を出してみたいなぁぁ~なぁ~んて思っただけよぉ」 「そうなの、私達ENJUとしては水銀燈なら大歓迎よ」 「フフッ……」 水銀燈とめぐが話している頃、翠星石はあの日、ジュンと一緒に乗った観覧車で小さくなっていく人込みを見下ろしていた。 「寂しいですぅ…やっぱり翠星石はバンドも真紅も大好きなのですぅ~」 西の空に冬の太陽がゆっくりと沈んでいく。 遠くに見える山の頂上はその光でオレンジ色に染まり出している。 あの日、ジュンと2人で乗ったこの観覧車、あの頃はまだ夏の香りがしていた。 あの山も、観覧車の窓から見える高速道路も、その向こうに見える青い海もみんな輝いて見えた。 ほんの数ヶ月前の思い出があまりにも眩しすぎて翠星石の胸を締め付ける。 ゆっくり、ゆっくり、そっと観覧車は上を目指して登っていく。 どうしてこんな事になったですかぁ―――――――――――――。 一番上にきた観覧車の窓から淡いオレンジ色の粒子が泣き出した翠星石を優しく包んでいた。 「私は……ジュン…翠星石……」 そして同じ頃、真紅は街のネオンが輝きだした交差点を行き交う車のテールランプを歩道橋の上からぼんやりと眺めている。 クリスマスが近付いたネオンは、どこか優しく、そして暖かい。 サンタの格好をした人がおどけながら交差点を渡る人の群れに笑顔を振りまいている。 そしてどこからかクリスマスキャロルが流れ出す。 こんなに体が寒いのはどうして? こんなに胸が苦しいのはどうして? いつしか歩道橋の上で佇む真紅の手には部室でひろったピックが握り締められていた。 それをじっと見つめる真紅は自分に質問を投げかける。 私は本当にジュンが好きなの? あの時のキスは? 私の気持ちはどうなの? これは本当に恋なの? 人を好きになるのはこんなに苦しいの? 私は…私の想いはどこを見ているの? しばらく真紅はピックを見つめたまま動かない。 そして街の音を聞きながら目を閉じるとピックを力いっぱい握り締める。 私は―――――――――――――――もう迷わないわ! そっと広げた手のひらからピックは音もなくスローモーションのように歩道橋からこぼれ落ちた。 * 「もう、カナの事をなんだと思ってるかしらー」 「本当にみんなどこ行ったんだよ? まぁ、僕のほうからも電話してみるよ」 「解ったかしらぁ、連絡が付いたらカナが怒っていたと伝えてほしいかしらぁ!」 「あぁ、そう伝えておくよ、じゃっ、バイバイ」 「カナを除け者にして今頃は美味しいものを食べてるに違いないかしらぁ」 いや、多分それは違うと思うけど………。 金糸雀はブツブツと不平不満を並びたてながら帰っていった。 やはり真紅達と連絡が取れないことに金糸雀はかなりご立腹のようだ。 まぁ、確かに3人同時に授業を抜けるのに僕か金糸雀に何も連絡が来ないのはおかしい。 水銀燈なら不意によく姿を消しているけど真紅と翠星石までもいないのはどうも……翠星石、そうだ、今日の翠星石はどうも様子が変だったな、何だか僕と真紅を避けているように感じたけど……なにかイヤな予感がするなぁ~。 この時の僕はただ漠然イヤな予感がしていただけだった。 その漠然としたものが何なのかはっきり解ったのは家に帰り、蒼星石と電話で話をした直後に訪れるとは思いもしなかった。 ジュンが部屋で制服から部屋着に着替えている頃、蒼星石はいっこうに繋がらない携帯を心配そうに見ていた。 翠星石はどうしたんだろ? みんなと映画でも見てるのかな? ふとそんな考えが浮かぶと少しやりきれない気持ちになる。 それは、みんなと言う中にはジュンが含まれているからである。 確かに真紅達とは違う学校に通っている蒼星石にとって今回のように不意にみんなと連絡が取れない時がよくあった。 だいたいそんな時は学校の帰りに盛り上がってそのまま映画やカラオケといった事が何度もあった。 今までだと翠星石が見てきた映画の内容やカラオケでのエピソードに蒼星石は笑顔で聞いていられた。 だが、ジュンに想いを感じ始めた蒼星石にとって映画やカラオケの話の中に、その場に自分が居ない時のジュンが含まれる話を聞くのは切なく感じる。 できれば自分もその中にいたい、少しでも近い場所にいて同じ時間、同じ光景を見ていたい。 そう思う蒼星石は繋がらない携帯の画面を翠星石からグループ検索に変えてジュンの番号を選び、ボタンを押す。 ジュン君、出てくれるかな………? 呼び出し音が1回鳴る毎に蒼星石の胸の鼓動は早くなっていく。 そして数回目の呼び出し音を聞いた時にジュンの声が聞えた。 「あ、あの…ジュン君、僕、蒼星石だけど…」 「あぁ、蒼星石か。どうしたんだ?」 「う、うん、今ジュン君、何をしてるのかな~って思って」 「家に帰ってきた所だよ、あぁ、そうだ、そこに翠星石っているのか?」 「えっ、翠星石はまだ帰ってないよ。僕はてっきりジュン君達と一緒にいるもんだと思っていたんだ」 「いや、翠星石も真紅も水銀燈も昼から居なくなってるんだよ」 本来なら翠星石たちがどこで何をしているのか気になる所だが、今の蒼星石にとってはジュンが一人でいること、そしてジュンと話しているほうが大切に感じられた。 ぼ、僕は―――湧き上がる気持ちにそっと呟くような言葉が出そうになる。 「ねぇ、ジュン君……」 「ん? 何だ?」 「あの~、僕が書いた詞の意味なんだけど…」 蒼星石はそこまで言うと次の言葉が出なくなる。 それはこの先に続くであろうセリフを言ってしまうのが怖かったからだ。 胸の深い所から導かれるように表れる気持ちを伝えてしまったら、もう二度と後戻りできない、いくら神様に祈りをしたところで伝えてしまった1秒後には戻れない、そして伝えたことにより全てを包む今の時間が押し潰されて行きそうで、そんな重い考えに蒼星石は勇気が出ない。 そう、たった「好き」と伝える一言に恐怖を感じている。 「あぁ、今朝みた蒼星石の書いた詞だろ? うん、凄くイイ感じだと思ったよ、 なんだか切なくて、こう何て言うのかな、恋?って感じが伝わってきたよ、 ちょっとラブレターみたいな詞だと思ったけど、あぁいう手紙を本当に貰ったらウレシイだろうな~ハハハ~」 電話の向こうで笑うジュンに蒼星石は声に出さずに心の中だけで囁く。 ジュン君、それは…僕の……ジュン君を想う気持ちなんだよ… 「よ、良かった~、ジュン君に誉めてもらって嬉しいよ…」 「いや、でも本当にいい詞だと思うよ、えっ、ん?……ははッ、ゴメン蒼星石、なんだかオヤジが呼んでるから、また後でいいかな?」 「うん、それじゃ翠星石が帰ってきたらジュン君や金糸雀が心配してたと伝えておくよ」 「あぁ、そう言ってもらえたら助かるよ、じゃ、バイバイ」 「うん、じゃぁねジュン君、バイバイ」 ジュンとの電話を終えると、フゥ~と深い息をつく。 誉められた詞、そして言い出せなかった気持ちに心は喜んでいいのか後悔すべきか蒼星石には解らなかった。 ただ次に何かきっかけがあれば「好き」と言ってしまいそうになる。 そんな予感めいた事を思う蒼星石の胸は激しい鼓動を感じていた。 「なんだよ~? もう、ご飯なのか~?」 蒼星石との電話を邪魔した父親に僕は少し声を上げながらテーブルについた。 そこには新聞紙を広げたままコーヒーを飲む父親は僕の顔も見ずに一言こういった。 「ジュン、突然でスマンが年明けくらいに転校することになりそうだ」 えっ? なんだよ、今なんて言ったんだよオヤジ? 転校って言ったのか? 僕は父親の言ったセリフがすぐには理解できなかった。 いや、理解というより信じたくなかったのかもしれない……。 ジュンに新たな転校の話が出た頃、翠星石は遅い帰宅をする。 蒼星石はいつもの声で呼ぶのを聞えないふりをして部屋に入った翠星石はイスに座り、机に飾られている写真を手に取る。 そしてこんな悩みなど知らない頃のバンドメンバーに語りかけてみる。 翠星石はどうしたらいいですかぁ? 見つめて語りかける写真には、まだジュンと出会う前の真紅と翠星石が無邪気な笑みを見せて手を取り合って写っている。 その周りには蒼星石、そして知り合ったばかりの水銀燈と金糸雀がいる。 自分達の大切なバンド、ローゼンメイデンが産声を上げた頃の笑顔だった。 翠星石は、どうしたらいいですかぁ、ねぇ答えるですぅ、真紅ぅ、蒼星石、水銀燈、金糸雀…教えてですぅ……… 翠星石は、翠星石は…やっぱり真紅も、みんな大好きなのですぅ。 でも、恋って、人を好きになるのはこんなにも辛くて痛い事なのですかぁ? もう、こんな気持ちはイヤですぅ、もうゴメンなのですぅ~!! 翠星石は携帯を手にすると、真紅の番号を押した。 その頃、真紅は電源を落とした携帯に気付かずにいる。 ただ真紅の足はまっすぐ翠星石の家に向けられていた。 (7)に戻る/長編SS保管庫へ/(9)に続く
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新春迎えて心機一転、ここは私立有栖学園 水銀燈「はぁ~・・・この季節ってめんどくさぁ~い・・・」 等とぼやく水銀燈、それもそのはず・・・この季節は身体検査があるからだ そしてしばらくすると雛苺のクラスの学級委員が保健室に入ってきた 生徒「失礼します、尿検査のはここにおいて置けばいいですか?」 入ってくるなりキッっとした声で話す生徒、しかし水銀燈は気の抜けた声で 水銀燈「い~わよぉ~・・・その辺おいておいてぇ~」 と実にだるそうに一声あげただけであった 3日後、検査の結果が有栖学園へ届き水銀燈が結果を見る・・・すると再検査の欄に雛苺の名前があった 水銀燈「はぁ~・・・苺大福ばかり食べてるから糖尿病にでもなったのかしらぁ~・・・ほんとぉにおばかさぁん」 などと言いつつ、面倒見の良い水銀燈は放課後雛苺を誘い近くのくんくん病院で審査を受ける事を進めた 水銀燈「雛苺~、面倒でしょうけど今日は検査を受けなさぁ~い」 面倒と言うものの面倒くささを感じさせない水銀燈の一声に対して・・・ 雛苺「でもでも、それが終わったら帰れるし、水銀燈先生と一緒ならいいのー!」 と元気な声で返された そして目標のくんくん病院に到着し受け付けを済ませロビーで待ってる水銀燈、その間に審査を受けてる雛苺 しばらくすると、医師らしき人物に呼ばれ医務室に呼ばれる水銀燈 一体どうしたというのだろう?と彼女にしては珍しく頭に?マークを浮かべていた・・・が医務室で話を聞いて事態は急変する 医師「すみません、急にお呼びして申し訳ありませんが・・・」 暗い顔で語りかける医師、さらに続けたその言葉は・・・ 医師「雛苺さんは・・・・癌に侵されてる可能性があります」 水銀燈「は?!?!?!?!?」 固まる水銀燈、もう脳内が一瞬真っ白になった 水銀燈「どうして・・・・あの・・・おばかさぁんが・・・?」 もう自分でも何を言ってるか判らない水銀燈、しかし医師は続ける 医師「ま・・・・まだ癌と確定した訳ではありません・・・しかし、もし癌なら極めて危険な位置に・・・」 医師も医師である、本来なら”確定した訳ではありません”でとめればよいものを一言余計に付けてしまったのだ その後の説明は右から左へ流れるように聞こえては消えるという内容であった 医師「とにかく、明日もう一度検査をしないことには・・・」 そう言い残し次の患者へ移る医師、残された水銀燈は虚無を見つめていた しばらくしてようやく我に返った水銀燈 水銀燈(何分・・・いや何時間?それともまだ5分も経ってない?) もはや時計を見る気力も無く医務室から出てる水銀燈・・・そこへ 雛苺「あー!水銀燈先生もきたのー!」 と、無邪気に水銀燈が戻ってきたのを喜ぶ雛苺の姿があった 水銀燈「あ・・・ぁ・・・・・ごめんねぇ・・・ちょっと・・・私も・・・検査受けてて・・・」 と見え見えの嘘をつく水銀燈、その顔は今にも泣き出しそうであった 雛苺「・・・・だ、大丈夫なのー?うにゅ~分けてあげるから少し食べるのー!」 それに対し嘘かどうかなど気にする素振りすら見せない雛苺、これを見て水銀燈は病院のロビーで崩れて泣いた・・・ そしてくんくん病院を後にする2人・・・本来ならそこで別れるのだが・・・ 水銀燈「・・・・ちょっと、雛苺・・・」 と声をかける水銀燈、今は泣き止んでるが声はまだ若干裏声である 水銀燈「・・・・今夜・・・うちに来なさい」 そして今にも崩れそうな気持ちを抑えてはっきりと雛苺に伝える 雛苺「えっ・・・いいのー?」 それを満面の笑みを持って返す雛苺、水銀燈はまた心が縛られる感じに見舞われる 水銀燈「いいから来なさい!来ないともう二度と誘ってあげないわよ!」 急に声を大きくして怒鳴る水銀燈、それは自分の心を鼓舞するかのような行為であった それからしばらくして雛苺と水銀燈は街の南にある住宅街へ行き、水銀燈の家に辿り着いた 水銀燈は一軒屋に住んでおり、見た目はオーソドックスな家であったが家の中はくんくん人形やらで埋め尽くされていた 隠れくんくんファンである水銀燈が他人を滅多に家に招かないのもこの為である 水銀燈「ただいまぁ~・・・」 誰も居ない家に対して水銀燈が声をかける、その相手は無論くんくんである・・・しかし今日は返事があった 雛苺「おかえり~!お邪魔しま~す!」 そう、水銀燈の後ろから元気良く声を上げた雛苺である いつもの水銀燈なら、”大声だして・・・ほぉんと、おばかさぁ~ん”等言うのだが今日は黙ったまま部屋に雛苺を連れて行った そして部屋についてからしばらくして水銀燈から飲み物を取ってくると言われ洋間に待たされる事になった雛苺 雛苺は考えた、何故今日の水銀燈はこんなにも元気が無いのだろうか?何故急に家に誘うのか?しかし考えても答えは出なかった・・・ そんな事を考えてるうちに水銀燈が戻ってくる・・・手には洋酒を持って 水銀燈「お待たせぇ~♪」 そして持ってきたウイスキーをテーブルの上に置く・・・ 水銀燈「雛苺・・・今日はこれ全部を空にするわよぉ」 そして雛苺にも飲めと遠まわしに告げる水銀燈、それに対してまだ酒を飲んだ事の無かった雛苺は戸惑うが・・・ 雛苺「わ・・・わかったのー!」 と戸惑いながらも元気良く水銀燈に返事を返した 二人が飲み始めて30分経過、水銀燈はまだ酔った様子も無くまだまだいけそうであったが一方の雛苺は目が回りフラフラグロッキー状態であった 水銀燈「でねぇ・・・真紅ったらぁ・・・この私にゴミ捨てしてこいなんてねぇ~・・・」 と愚痴を言う水銀燈、それを上の空で聞いてる雛苺・・・いやもう声は届いてないのかもしれない しかし、水銀燈はずっと頃合を見計らっていた・・・ せめて酒の勢いで病状を伝えないと自分が潰れてしまいそうだったからわざと飲んで忘れてこれが悪い夢か何かだと思いたかった しかし、非情にも今日はいくら飲んでも酔いはせず、逆にどんどん意識がはっきりしてくる 飲み始めて1時間経過、もう雛苺は倒れ寝てしまっている・・・・ そんな雛苺に毛布をかけ、電気を消す水銀燈・・・しかし部屋からは出ずに暗闇の中一人で飲む・・・ そしてついに意を決して寝ている雛苺に告げる・・・ 水銀燈「・・・あなた、癌なんだってぇ・・・」 もう一口・・・いやもう一杯一気に飲み干す 水銀燈「・・・しかもぉ・・・かなり危ないんだってぇ・・・」 知らずの内に唇が震えだす 水銀燈「・・・・・・ごめんね・・・結局しっかりと言えなかった・・・・」 この言葉を最後に決壊が崩壊したように泣き出す水銀燈 その夜、水銀燈の家では洋間から水銀燈の嗚咽と雛苺の寝息しか聞こえなかった 次の日、学校を休み朝一で病院に向かう水銀燈、それにつれられ同行する雛苺・・・ そう、再検査をする為に学校を休んだのだ、それも無断欠席 そして学校に行こうとする雛苺を無理やり再検査させ、結果を聞く・・・ もう覚悟が決まったのだろうか、昨日のような感じにはならなかった・・・ そして、ついに医師に呼ばれ医務室に行った水銀燈・・・しかし 医師「う~ん・・・どうも癌が綺麗さっぱり消えてるんです・・・」 と医師からは意外な言葉が伝えられた・・・そして別の意味で頭が真っ白になる水銀燈 水銀燈「は・・・?それはどういう・・・?」 やっとの思いで気持ちを整理し医師に聞く水銀燈、そして医師からは検査結果のカルテを見せられる 医師「良く見てください、ここの○○なのですが・・・・・・」 そして意味のわからない説明を30分聞いた水銀燈だったが結局は何故なのかは判らなかった そしてロビーに行くと雛苺が水銀燈を待っていた 雛苺「水銀燈先生おそいのー!」 いつものように出迎える雛苺、それに対して小さく”おばかさぁ~ん”と言う水銀燈があった その日、いつもの変わりない生活に満足する水銀燈と満面の笑みの雛苺の姿があった fin 後日談 後日・・・・・くんくん病院は何者かの放火によって炎上していた 幸いにも負傷者は出なかったがくんくん病院は完全に焼け崩れてしまった 雪華綺晶「・・・なぁ、水銀燈・・・本当によかったのか?」 肝の据わってる元軍人雪華綺晶が水銀燈に尋ねる 水銀燈「あらぁ、私に大恥かかせたんですものぉ~・・・当然の報いよ♪」 そしてこれが当然の結果であると言わんばかりの水銀燈の姿があった
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衣装情報 衣装名 すばる用 いつもの制服(すばる) 夏日用 いつもの制服(夏日) 琴美用 いつもの制服(琴美) 部位 服 パラメータ タイプ 喜 怒 哀 楽 愛 憎 欲 勇 レベル 0 0 1 2 1 0 0 0 0 +1 0 2 3 2 0 0 0 0 MAX 解説 お気に入りのいつもの制服。やる気は充分!今日もお仕事がんばります!!【初期衣装】 入手方法 1個は初めから所持 衣装ショップにていつもの制服衣装Pと交換 関連ページ 「新人声優」役衣装一覧 「新人声優」役カード一覧
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沖合いにうかぶ無人島から白く力強い雲が沸きあがる。 裏山からは無数のセミの鳴き声が暑さのためにダラケた教室を包む。 ここは海沿いのとある地方都市、そこに私立薔薇女子高がある。 創立は約30年と新しく、そのため校風はいたって自由のようで偏差値もそれほど高くなく近所の高校からは「薔薇女(ばらじょ)」をもじり「バカ女(バカじょ)」とも呼ばれている。 そんな女子高から一つの物語が始まろうとしていた。 開け放たれた窓際の席に座るその少女は自由な校風どおり金髪の頭に大きなピンクのリボンをつけノートに落書きをし時間を潰している。 その後ろの席では一見美少年に見えなくも無いボーイッシュな少女が熱心に黒板に書かれた文字をノートに書きとめている。 とつぜんその少女を呼ぶ声がベランダの壁際から聞こえる。 「蒼星石・・蒼星石、そのまま先公に気付かれずに翠星石の話を聞くですぅ」 今までノートをつけていた少女はペンの手をとめ小声でベランダに向かい姿の見えない声の主に話しかける。 「翠星石、また授業を抜け出したの?見つかったらまた反省文だよ」 「イイから聞くですッ、さっき真紅とドえらい事を思いつたですぅ」 「ドえらい事?」聞きかえす蒼星石には嫌な事例が次々と思い浮かぶ。 この双子の姉である翠星石が思いつく「ドえらい事」は本当にドえらい事になることが度々あったからである。 「心配は無用なのだわ蒼星石」 と壁際から翠星石と違う声が聞こえてきた。 「真紅も一緒なの~?」 蒼星石の前に座るピンクのリボンを付けた少女も話に入りベランダに向けて小声で話しかける。 「チビ苺は話に入ってくるなですぅ、お前が入ると気付かれるからそのまま聞いていやがれですぅ」 と注意された雛苺は「うぅ~」と少しスネ気味に頬を脹らませて翠星石、真紅、蒼星石の会話を聞く。 「薔薇女の記念祭なのですが、何をヤルか決まったですよ蒼星石」と声がだんだんと大きくなりながら翠星石は話し続けた。 それはこの12月に薔薇女子高が創立30周年を迎えるにあたり学校で創立記念祭を行う。そのときの出し物をそれぞれ考えていたところであった。 「私達でまたバンドを組んでみんなをアッと言わせるのだわ」 その案に雛苺が飛びつき大声で言う。 「バンドをヤルの~?ヒナもヤルのぉ~参加するの~!!」 その声にクラス全員が雛苺のほうを見る。 「チッ、バカ苺・・気付かれたですぅ、真紅にげるですよッ」 翠星石が真紅の手を引き中腰のままベランダの壁沿いを走っていく。 その後ろから声が聞こえる。 「こらぁ~、お前らはC組の真紅と翠星石かぁ~」 「まったく雛苺のせいでバレてしまったのだわ」 「チビ苺には後でアンセムのスペシャルパフェをおごらせるですぅ」 放課後2人は反省文を書きながら窓から校門を見る。 そこには真紅と翠星石の帰りを待っている蒼星石と雛苺の姿があった。 「これで今回は許してやるですぅ」 特大のパフェを頬張り翠星石がスプーンを雛苺に向けて言う。 真紅は紅茶をおかわりしながら首をうんうんと肯いている。 「ところでバンドを組むって言ってたけど、本当にまた組むの?」 「そうですぅ、ロックをヤルですよッ。ねぇ真紅」とニコッと笑う翠星石。 運ばれてきた紅茶にミルクを入れかき混ぜながら真紅はやや難しい顔をする。 「問題はギターの水銀燈よ、彼女がまた私達のバンドに参加してくれるかが問題なのだわ」 ミルクをかき混ぜていたスプーンが止っていた。 小さくガッツポーズをし細長いタバコに火を付ける。 銀髪の少女が打つパチンコ台に店員が10連のフダを挿し箱を新しいのと交換していく。 「サボって来たかいがあったわぁ~」 その喜ぶ彼女の肩をポンポンと誰かが叩き、声をかける。 「水銀燈、またパチンコしてるの?こんど見つかったらかなりヤバイのかしら~」 水銀燈と呼ばれた銀髪の少女が振り向く。 「あらぁ、誰かと思ったら金糸雀じゃない。貴女がこんな所に来るなんて珍しいわねぇ」 「こんな入り口近くに座っていたら外から丸見えなのかしら~」 金糸雀は外を指差しながら答える。 「見つからなければ何てことないわぁ、それより金糸雀も打ちなよぉ」 水銀燈はとなりの台に玉を入れる。金糸雀は座り見よう見まねで打ちはじめながら水銀燈に言う。 「帰りに校門で蒼星石とチビ苺に会ったわ、またバンドをヤルってチビ苺は喜んでたわ」 水銀燈はパチンコのモニターを見ながらそっけなく答える。 「あっ、そおぅ。私には関係ない話よぉ~」 その言葉に水銀燈の顔を心配そうに見ながら金糸雀は質問する。 「水銀燈はもうギター。音楽に興味はないの?」 「ギター?そんなのもう忘れたわぁ」 しばらく黙ったまま2人はそれぞれのパチンコのモニターを見ていた。 「リーチ」 パチンコ台の音声が知らせる。 いまいち何が起ころうとしているのか解らない金糸雀は水銀燈の肩を力まかせに叩く。 「痛ったいわねぇ、何よ金糸雀ぁ?」 「エビとカメが揃いそうなのかしらぁぁぁ~」 数時間後2人は満面の笑顔でパチンコ屋を後にする。 「こんな大人の世界があるなんて今まで知らなかったかしら~」 興奮が冷めやまない金糸雀はスキップしながら水銀燈と駅に向かい歩いていた。 金曜の駅前は仕事帰りやこれから始まる夜を楽しむ人々で込み合っている。 その人込みからギターの音色と歌声が聞こえる。 お世辞にも旨いとは言いがたいストリートライブに足を止める人、そのまま通り過ぎる人、2人は暫らく足を止めライブを見ている。 「このレベルならあの時の私達のほうが遥か上だったかしら~?」 得意げに言う金糸雀に水銀燈は首を軽く横に2~3回ほど振り答えた。 「知らなぁい。もう忘れたわぁ~」 そう言うと水銀燈は駅に向けて歩き出した。 あわてて水銀燈のあとを追いかける金糸雀。だが人込みに邪魔され見失う。 「もおォ、水銀燈はどこに行ったのかしら?」 立ち止まり周りをキョロキョロと見渡す金糸雀。 そのとき聞き覚えのある声が耳に入ってきた。 「モトリーのシーフードピラフが最高に美味しいのですぅ、もちろんチビ苺のオゴリで決まりなんですッ」 「アンセムのパフェで許してくれると言ったの~」 「夕食は自分のお金で食べるのだわ」 「真紅がそう言うならしかたないですぅ~・・・あれ、金糸雀?」 人込みから真紅、雛苺、翠星石、蒼星石の4人が現れた。 「4人そろってバンド再結成の話かしらァ? それなら薔薇女一の音楽通この金糸雀に一声あってもイイのかしら~」 駅から5分ほどの位置、店は小さいが地元の女性に人気があるカフェレスト「モトリークルー」がある。その店の一番奥の席に金糸雀をくわえた5人は夕食後のカフェオレ、紅茶、イチゴソーダフロートなどを前にしていた。 「えっ、僕達と会う前に水銀燈といたの?」 カフェオレを口に運びながら蒼星石が訊ねる。 「そうよ、水銀燈ったら、またサボってパチンコしてたのかしらァ。」 アイスコーヒーにシロップを入れながら金糸雀が答える。 「金糸雀もパチンコしたの~?」 「ボロ勝ちだったのかァ~しらッ」 と得意げに今日の勝ちを自慢する金糸雀。 その自慢話も終盤に差し掛かると金糸雀は言いにくそうにテーブルに落ちた水滴を見つめながら小声で前から持っていた疑問を真紅達に聞く。 「打ってる時もそうだし帰りのストリートライブを見てる時もそうだけど 水銀燈はもうギターはヤッてないって言ってたかしら・・どうして音楽を? 真紅達のバンドは解散したのかしらぁ~?」 重く沈んだ空気が5人の座るテーブルを支配しはじめると少しニラミ気味に翠星石が口を開く。 「金糸雀みたいな新入りには関係ない話なのですぅ、だいたい同じ中学」 サッと真紅の手が翠星石の話を遮り、真紅も同じようにテーブルに落ちた水滴に目をやりつつ口を開く。 「いいのよ翠星石。金糸雀も同じ薔薇女の・・私達の仲間なのだわ。 だから隠し事はダメなのだわ・・・」 そういい真紅はゆっくりと時計の針を巻き戻すように話し始めた。 始まりはまだ薔薇女子高に入学する前にまで時間は巻き戻った・・・。 * 午前の授業が終わりそれぞれが思い思いの席で弁当を広げている時間。 真紅、翠星石、蒼星石、雛苺が中庭で座り昼食をとっていると4時間目の授業をサボり姿を消していた水銀燈が笑顔で戻ってきた。 「ねぇ~真紅ぅ。これ、これよぉ~。ゲットしちゃったァ~」 手に持っているのはこの街を拠点に活動し今やインディーズの中ではベスト3に入りそうな勢いのバンド「ENJU」のCDだった。 水銀燈はそのENJUのメンバー、ギタリストの白崎の大ファンだった。 「うわァァ~ENJUのCDなの~、ヒナも大好きなのぉ~」 雛苺は水銀燈に飛びつき抱きしめている。それを見た真紅も笑顔で言う。 「今すぐにでも聴きたいわね水銀燈」 「翠星石も聴きたいですぅ~。蒼星石も聴きたいですよねッ」 「そうだね、僕もすごく聴きたいよ」 それぞれの声を聞き水銀燈は人差し指を立て、その指をスゥーと校舎の3階を指差しこう言う。 「私も聴きたぁい、だから・・今から放送室を占拠するわよぉ」 5人は校舎の階段を3階まで競争するような勢いで駆け上がり放送室と書かれた部屋のドアを開け中に走りこむ。 「ハァハァ、さすがに息が上がってしまったのだわ水銀燈」 「ウフフ、だらしないわねぇ真紅ぅ。あっ、翠星石、早くかけてぇ」 水銀燈が差し出すCDを翠星石は放送室のCDデッキに入れスタートボタンを押しながらニヤッと笑いコードをデッキから放送の機材につなげる。 「これを全校みんなに聴かせてやるですぅ」 その日の放課後は5人そろい教室で反省文を書きながら音楽の話でもり上がっていた。 「ねえぇ水銀燈、私達にも出来るかしら?」 「なぁに?何が出来るの真紅ぅ?」 「ENJUの白崎さんはこの中学出身、なら私達にも音楽って・・ バンドって出来るかしら?」 その言葉にみんなが反応する。特に翠星石と水銀燈は席から飛び上がり2人そろって同じ言葉が出てきた。 「素敵だわぁ~・・・・素敵ですぅ~」 顔を見合わせる水銀燈、翠星石、そんな2人を見る真紅、そして笑う。 ガラスから夕日が入り、机、黒板、無邪気に笑う5人の少女を優しく包む。 5人の話はいつしかバンドを組みデビューし、世界ツアーをする。 そんなシンデレラストーリーが放課後の教室で夢開いた瞬間であった。 「水銀燈がENJUのファンだったって聞いたのは初めてかしら~」 蒼星石は金糸雀の目を見つめ言葉を選びながら言った。 「うん、金糸雀には初耳だったと思うよ・・言い出せなかったんだろうね。 水銀燈にしてみればENJUはもう存在しないバンドだから・・」。 蒼星石の言葉に真紅の話が続く。 「そう、あれからすぐに私達はバンドを組んだのだわ。バンドといっても マネごとのようなバンド・・・・・」 買ったばかりのギターを真紅達に見せびらかしながらうっとりとした表情の水銀燈はギターにキスをしながら言う。 「当然ENJUのコピーから始めるわよぉ~」 同じように初めて自分の楽器を手にした蒼星石と翠星石も賛成する。 「ベースとドラムセットを一度に買うなんて凄いのだわ」 「おジジとおババが買ってくれたですぅ・・それよりも練習ですよッ」 5人は毎日のように練習に明け暮れ時には翠星石、蒼星石の祖父、祖母が趣味の旅行に出たときなどは学校も行かず音楽合宿といつわり1日中ずっと音を出していた。 やがて季節が変わる頃にはENJUのコピーはもちろん他のバンドの曲も積極的にコピーし実力的にも聴けるようなバンドになりつつあった。 そんなある日、突然の出会いが真紅、水銀燈、そして翠星石、蒼星石、雛苺に訪れた・・・。 金糸雀は静かに語る真紅の話にだんだんと身を乗り出し聞いている。 翠星石はいつしか視線を空になった金糸雀のアイスコーヒーのグラスを見つめていた。 そのグラスの氷が溶けカランっと透明な音をだして小さくグラスの中で転がる。 その音と同時に真紅の口からある事実が語られた。 「水銀燈は白崎さんのこと本当に好きだった・・でも私が・・・」 そう呟くと真紅はじっとテーブルの水滴をしばらく見つめ、そして視線をガラス窓に移し外を見ながら言う。 「そう、水銀燈と白崎さんはあの2人のようだったのだわ」 週末の夜を楽しむ恋人達が笑顔で店の外を通り過ぎていった。 「えぇぇ~、あのENJUのギターの白崎と水銀燈がァ・・信じられないのかしらァ~!」 「まぁ、付き合っていたと言うより水銀燈は白崎にダマされてたですぅ」 「そうなの~白崎は悪いヤツなの。水銀燈にスキって言いながら真紅にもスキって言ってきたのぉ~」 頬を膨らませる雛苺。それを聞いていた金糸雀は話の状況が掴めない。 「ちょっと待つかしら、順を追って説明するかぁしら~。どうやったらENJUの白崎と知り合えたのかしら~?」 その質問に蒼星石が答える。 「僕と翠星石に5歳年上のいとこがいるのは前に話したよね金糸雀?」 金糸雀は真紅の隣に座る蒼星石に顔を向けてコクッと肯きながら言う。 「今は仕事でアメリカのどこかに住んでる人かしら?」 「そうだよ、ちょうど僕達が薔薇女に入学した時に一度帰ってきたんだ」 翠星石も口をはさみ言い出す。 「そうですぅ、そのカズ兄ぃが中学、高校と白崎と同じで友達だったですぅ。 帰ってきて翠星石と蒼星石がバンドをやってるのを見て白崎と会ってみるか?と言われたのですぅ」 その時ウェイトレスが水を入れに来たので少し話は途切れたがウェイトレスが水をいれ「ごゆっくり」と言い去っていくのを待っていたように翠星石の話は始まった。 それはまだそれぞれが薔薇女の制服を着るのがギコチなく桜がツボミからようやく花開く時期に時計の針は巻き戻った・・。 彼女達が薔薇女に入学し、まだ高校生活に慣れていないときに蒼星石と翠星石から思いがけないプレゼントが彼女達に届いた。 「この間からいとこのカズキ兄さんが帰ってきているんだ、それで昨日カズキ兄さんが僕の家に遊びに来たんだよ」 珍しく蒼星石が興奮して話しだし、それに翠星石も続く。 「翠星石と蒼星石がバンドをやっていると言ってやったですぅ、 そうしたらカズ兄ぃは、なんとENJUの白崎と高校が同じだったですよッ。そして」 翠星石と蒼星石2人が口をそろえて言う。 「白崎と会えるんだ・・・会えるですぅ。そして僕達のバンドの音を聞いてくれるかも?」 「きゃ~、うっそォ?それ本当の話なのぉ?もしウソだったら貴女達は今すぐジャンクよぉ~」 口に手をあて喜び飛び跳ねる水銀燈。 真紅は水銀燈とは反対に意外と冷静に蒼星石と翠星石の話に反応する。 「それは凄い話なのだわ。もし会えて私達の音を聴いてくれるならこれ以上ないアドバイスになるかもしれないのだわ」 「で、いつ会えるの~、ヒナも会いたいのぉ~」 「来週の金曜の昼2時に僕達がいつも練習で借りてるスタジオに来てくれるみたいなんだ・・どう?金曜、サボるかい?」 蒼星石は少しイタズラっぽく聞く。 「もちろんよ~なんなら今すぐサボって練習よぉ。白崎さんの前で変な音出せないじゃない?」 その話から曜日は進み約束の日・・彼女たちはいつも借りているスタジオノーマッドにいた。 一通り音をだしそれぞれのミスなどを指摘し音を合わせていく。 水銀燈は壁に掛けられた時計の針を気にしている。時計の針は2時を40分ほど過ぎている。 (遅いわァ、本当に来てくれるのかしらァ) そう考えた矢先にドアのノブがゆっくりとまわり男が笑顔で入ってくる。 「あっカズキ兄さん、遅いよ~」 蒼星石がベースを置きドアに近づく。 「ゴメン、白崎のヤツが来るの遅れてさぁ~」 カズキの後ろからもう一人の男が入ってくる。 「こんにちは、白崎です・・」 長編SS保管庫へ/(2)へ続く
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運命の分かれ道 ◆.WX8NmkbZ6 ルパン三世は夜神月と共に、田村玲子の問い掛けを聞いた。 問いの後、長い沈黙が続く。 その間に濡れた体の上にバスタオルを這わせていた玲子が、大方の水滴を拭い終えた。 それを察してルパンが玲子本人から預かっていたデイパック内の新しい服を出すと、彼女はそれを受け取って身に纏う。 大浴場での用事が一通り済んだ事で、三人は連れ立って最上階の展望スペースまで移動した。 三人それぞれが椅子を持ち寄って着席し、問いについて改めて思考を始める。 奇しくもそれは正午、第二回放送と同時。 『こんにちは、みんな』 緊張した場に対する間の悪さにルパンは舌打ちする。 声変わり前の少年の声。 話す内容のおぞましさとミスマッチな、たどたどしささえある調子が不気味だった。 そしてそこで玲子が観察対象として警戒していた泉新一、更にルパンの仲間である次元大介の名が告げられる。 「……やっぱな」 ルパンは放送が終わるのを待ってからそう口にした。 望遠鏡で総合病院の様子を見ていた――そこで次元の死を目撃した。 それを見間違いだった、勘違いだったと済ませられるとはルパンも思っていなかった。 ただ、気分が悪い。 何も出来なかった自分が苛立たしい。 同じく仲間である石川五ェ門の生存を確認出来た事がかろうじて、せめてもの幸いと言えるだろうか。 ふと玲子が「やはり呼ばれたのは咲世子か」と小さく漏らした。 ルパンがそれについて詳細を聞き出そうとすると、当然のようにはぐらかされる。 「ただの独り言だ……それより、仲間が死んだらしいな。 どんな気分だ?」 その言葉に、ルパンは逆上しかけた。 仲間の死への好奇心――それは相手が人間なら、殴り掛かっていたかも知れない。 しかしルパンを思い留まらせたのは、彼女がパラサイトという人ならざるものだという事実に他ならない。 そして彼女はパラサイトと人間について根元的な疑問を抱いている。 ルパンの感情の揺れに関心を示すのは無理からぬ事なのだ。 「気分ね……最悪さ、そりゃあな。 いつ死んだっておかしくねぇ事してるったって、あいつもこんな所で死にたかぁなかっただろうよ」 懐から煙草を出そうとして、普段と違い持ち合わせていない事を思い出す。 諦めて両手を頭の後ろで組み、玲子との会話に専念する事にした。 何せ、解答を誤れば『食われる』のだ。 そんな死に方では、後で次元に笑われる。 「そういうお前さんはどうなんだい? 知り合いだったんだろ?」 問い返すと、玲子は能面のようだった表情を僅かに――微かに変えた。 困惑の色が見え、それが玲子を人外として見ていたルパンには意外だった。 「……分からんな。 だが群れを形成していた仲間が死んだ時とは違うようだ」 玲子の知り合いである泉新一によって、仲間が殺された。 その時は特に感慨はなかったという。 それと今との違いに、玲子は少し考え込んだ。 「恐らくより興味があったから、だろう。 パラサイトを宿したまま人間の脳を残す、極めて特異な存在……パラサイトであり、人間でもある。 この少年なら何らかの答えに辿り着くのではないかと、期待していなかったと言えば嘘になるからな」 玲子が出した結論は、やはり『悲しい』等といった感情とは別物だった。 関心が薄かったから悲しくない、というのではない。 関心は濃かったし感じ入るところはある。 しかし、そもそも悲しいという感情が存在しているのかすら不明瞭なのだ。 それがパラサイトであり、目の前にいる存在である。 玲子には人間的な『ブレ』があるが、人外である事に変わりはない。 その点を、ルパンは改めて心に留めた。 「改めて聞こう。私達は『何』?」 放送で中断された問いを再び示され、ルパンは視線をちらりと月の方へ移す。 月は沈黙を保っていた。 顔色が悪くどこか呆然としているようで、会話について来ているのか定かでない。 聡明な月らしくない姿にルパンは不安を覚える。 ルパンと月の主張が衝突してしまった、まさにその時に玲子が来訪した。 二人がお互いに言葉を尽くす時間は与えられず、ルパンには今の月が何を思っているのか分からない。 ただ、今は玲子の問いに答える事に集中する。 月と改めて向き合うのはそれからだ。 ルパンはそう決めて、玲子に視線を戻した。 「そうは言うけどよ。 俺達に客観的な答えを求めるってのは、ちょーっと無理があるんじゃねぇか?」 「と言うと?」 「俺達は下手したらお前さんに食われちまうんだぜ。 こっちにしてみりゃ、何とかして人食いなんかじゃねえって説得しなきゃならねえんだ」 ルパンと月にしてみれば、命が掛かっている。 それも自分達のだけでなく、玲子がこれから出会う人間全てのだ。 答えるべき内容は初めから決められてしまっている。 「……成る程、確かに脅迫しているも同然の状況だな」 玲子も得心がいったようで、数秒沈黙してからこう応えた。 「ならば約束しよう。 お前達の回答の内容に関わらず、私はお前達を食わない。 また回答が私の満足出来るものならば、私はもう人を食わない」 ルパンは椅子から転がり落ちそうになり、それまで反応の薄かった月も目を見開いた。 対する玲子は無表情のまま。 パラサイトは食人を本能に命じられているものの、必ずしも人を食わなければ生きていかれない訳ではないという。 それでも、本能に逆らうのが簡単な事とは思えなかった。 「……いいのかい、そんな約束しちまってよ」 「私は、『仲間』全体の未来の可能性の為に努力している」 この約束が守られるのなら――例え回答が「パラサイトの本質は食人にある」というものでもあっても。 それに満足出来れば、玲子はもう食人をしないのだ。 つまり玲子が『答え』を求めるのは、それに従って生きる為ではない。 純粋に『知る』為に、仲間の為に求めているのだ。 「お前さんが約束を破るってー可能性は?」 「信じるかどうかはお前達の判断に任せるしかないな」 「『食わない』ってだけで、殺しちまうとか?」 「言葉遊びの趣味はない。 殺す気もないから安心しろ……勿論、自衛の場合は除くがな」 ルパンはその姿勢に共感するものがあった。 幾つもの犯罪に手を染め、盗み出した財宝は数知れず。 だがいつも、財宝そのものを求めていた訳ではなかった。 「いい~ぜ、その条件で。 『私達は何』……このルパン様なりの答えってやつをくれてやる」 ルパンが椅子に座り直し、足を組みながら言い放つ。 それでも月は不安げな視線を送ってきていた。 月の心配も分かる――玲子が約束を反故にすれば、この場で二人とも死ぬかも知れない。 この会場にいる参加者全体に危険が及ぶかも知れない。 玲子との対話自体が賭だ。 だがあらゆる死線を潜ってきたルパンには、この賭に勝てるという確固たる自信があった。 ▽ ――僕は…………何者なんだ? 様々な考えが混濁して纏まらず、月は二人のやり取りの静観に努めていた。 荒唐無稽な世界については、諦めと共に受け入れている。 異常な破壊力の拳を持ったカズマ。 F-1周辺で起きた戦闘の中、高速で駆け回り、人間では到底届かない高さまで跳躍した者達。 そして、パラサイト。 ここに来て「信じられない」と耳を塞いでいてはその先に死があると、月は感じていた。 緊迫した空気の中でルパンの顔色を窺う。 失敗の可能性を微塵も感じさせず、むしろ生き生きとしていた。 世界を股に掛けて活躍する大怪盗――というのは、嘘偽りでも誇張でもないのだろう。 それでも月の方が緊張してしまうのは、月がまだ玲子に答えられるような回答を持ち合わせていないからだ。 パラサイトは、そもそも生物と定義して良いのだろうか。 生物は自己増殖と細胞による構成、代謝の三つの条件によって定義される。 だがパラサイトは子孫を残さない。 ウイルスが生物か否かで議論されて『非生物的存在』といった呼び名を与えられているように、新たな区分が必要かも知れない。 そんな相手を説き伏せられるのか、ルパンを信じてはいても不安は拭えなかった。 月が固唾を飲んで見守る中、ルパンは回答する。 「俺達にとっての隣人、ってのはどうだい」 「本気ですか」と、口を挟みそうになった月は慌てて言葉を飲み込んだ。 余りに無防備な答えに見える。 だらしなく座り、椅子を体ごと傾けては椅子の脚二本、或いは一本だけで倒れないよう釣り合わせる――遊び半分で話をしている。 だがルパンと半日行動を共にした月は、彼を尊敬していた。 例え犯罪者であっても、月から見てもルパンは聡明で経験豊かな大人なのだ。 人間の良いところも悪いところも肌で知り、物事の酢いも甘いも飲み込んできた。 そんな彼の回答が納得出来るものでなかったとしても、阻みたくはなかった。 だから月は彼の話の続きに耳を傾ける。 「そりゃあ人を食うなんてとんでもねぇ。 社会はパラサイトってのを認知すりゃあ排除しようとするだろーぜ、山から出て来ちまうような肉食動物と一緒でよ。 だが人を食わないでも生きられるってんなら、お互い妥協してやってくってのもいいんじゃねーの?」 人の言葉を理解する熊や狼と同居出来るか――否。 むしろ人々は、普通の熊や狼以上に危険な存在として滅ぼそうとするだろう。 それはパラサイトが熊や狼よりも強いから、ではない。 同じ言葉を使いながら、それでもまるで生態の異なる生物が『不気味』だからだ。 だから例え「人を食わない」と全てのパラサイトが約束したとしても、人間はパラサイトを受け入れられないだろう。 月にはそう思えてならなかった。 しかもルパンは問題をすり替えている。 それに、玲子もまた気付いたようだった。 「妥協とはつまり、先程の約束を他のパラサイトにも強制するという事だな。 彼らを説得するのは非常に難しい……それに、これは私の問いへの回答ではないな。 お前の願望だ」 「その通りさ」 玲子の指摘に、ルパンはあっさり頷いた。 してやったりとでも言いたげな表情は、こうして彼女と話すのを純粋に楽しんでいるようにさえ見える。 玲子が突然気まぐれを起こせば食われるかも知れない、という警戒心が窺えない。 彼女への信頼の出処が、月には分からなかった。 「客観的にパラサイトってもんが何かってぇ問いに応えるなら、バランサーってとこか。 食物連鎖のてっぺんで調子に乗って、文明を発達させながら空気も海も汚すわ壊すわ。 そんな人間達を食っちまう――敬虔なクリスチャンなら天罰、なんて言葉を使うかも知れねぇなぁ」 月が答えたとすれば、恐らくこれに近いものになるだろう。 バランサー。 増え過ぎた人間を減らす。 人間を食わなくても生きられるにも関わらず「この種を食い殺せ」と本能に命令されている。 本能――神の意思か、それとも地球の悲鳴か。 クリスチャンでもロマンチストでもない月はそこまでは思わないが、結論は似たようなものだ。 腐った世界の腐った人間達を食い殺し、星全体の均衡を保つ。 パラサイトとはそういうものだ、と。 「だから隣人ってのはお前さんの言う通り、俺がそうあって欲しいってぇ期待みたいなもんさ」 「何故期待する? 食われる恐怖からか?」 「勿論、食われるのは御免だ。 だけどよ……俺ぁどうにもすっきりしねぇんだ」 ガタン、と乱暴な音を立てながら椅子の脚が床に着く。 ルパンの表情からは軽薄な笑みが消え、唇を引き結んだ真面目なものになる。 「お前さん達が人間の言葉を理解出来んのは、上手く擬態して人間を楽に食っちまう為か? そんな理由じゃ……さぁみしいだろ」 「『さみしい』?」 月は、ルパンの言わんとしている事を理解した。 玲子を一人の『人間』として扱い、正面から真剣に向き合っている事も伝わってきた。 だがそれでも、月がルパンに賛同する事は出来なかった。 「お前さん達の頭が良いのは、人間とこうして話をする為……って思いてぇじゃねぇか」 ルパンの感情は間違っていない。 少なくとも、玲子相手なら。 しかし玲子の話からすると、彼女はパラサイトの中でもかなりの変わり種なのだ。 そんな彼女を基準に考えるべきではない。 会話出来る。 思考出来る。 確かにただの肉食動物とは違う。 だが、だからこそ危険なのだ。 社会に融け込み、普通の人間と同じように生活し、影で人を食らう。 まして玲子以外の多くのパラサイトが人間を家畜程度にしか見ていないのなら、共存は不可能だ。 知能が高くても、話し合いが通用するかは別問題。 玲子の言う通り、彼らを説得するのは「非常に難しい」。 そして月の神経では、彼らを隣人とするのは耐えられない。 「しかし、人を食らうという本能を捨てられないうちは人間の隣人ではない。 そうだな?」 「あぁそうさ。 人を食う奴でも隣人でいい、なんて言えんのは自分が食われる覚悟がある奴だけだ。 俺はとても善人たぁ言えねぇ生き方をしちゃあいるが、それでも食われてやる気はさらさらねぇ」 「人を食う事を止め、人間達と同化する形で隣人として共生していく……それがパラサイトの未来、あるべき姿」 「俺にとっては、の話だけどな」 「成る程、お前の考えは分かった」 もし、それでもそれでも彼らと共生したいのなら。 彼らに定期的に『餌』を与える――人間がパラサイトを「飼う」形で管理出来るなら、或いは。 そう。 ――死刑囚や指名手配犯といった犯罪者をパラサイトに提供する形なら、共存が可能なのでは? ――罪を犯せばパラサイトに食われるという恐怖が抑止力となり、世界の平和にも―― 月は、瞬時に己の我に返る。 これは。 この考え方は。 「犯罪者なら死んでも構わない」なんて非道な考え方は。 ――まるで、キラそのものじゃないか……!!! 叫び出しそうになる。 自分の内側に、本当にLが言ったような犯罪者の側面が眠っているようで――頭を掻き毟りそうになる。 ルパンがそんな月の異変に気付いてか、声を掛けようと口を開いた。 だがその声は届かない。 外と接していた窓ガラスが砕け散ったのだ。 ルパンが刀をデイパックから出しながら目を向けると、そこには少女が浮いていた。 黒い羽を持ち、しかし羽ばたく事なくガラスがあった場所に浮遊している異様な少女。 彼女は整い過ぎた顔立ちに妖艶な笑みを張り付けていた。 しかしその完璧と言って良い顔には僅かに傷が付き、紫水色の瞳にはヒビが入っている。 その事から彼女が『人形』なのだと気付いた。 (人形が……動いている……!?) この会場では有り得ない事が有り得るのだと、納得はしてはいる。 それでも衝撃は変わらない。 己が何者なのか、その答えも分からないまま、月はその少女と邂逅した。 ▽ 「ごめんなさぁい。 入り口を見たら不細工なイタズラがしてあったから、こっちから失礼したわぁ」 水銀燈は展望室の中へと入り、宙に浮いたまま三人を順に睨め付けた。 この場では穏当に協力者を得るつもりでいる。 相手が単体ならばともかく、三人相手に戦うのは水銀燈の力を以ってしても面倒だからだ。 まして一人でも討ち洩らせば、水銀燈は危険人物として情報を広められてしまう。 確実に殺せる状況でないなら手を出すべきではない。 故に水銀燈は、出合い頭に攻撃するような真似はしなかった。 そこで一歩前へ出てきたのは、真っ赤なスーツに猫背の男。 「こいつぁー驚きのべっぴんさんだぜぇ。 俺様はルパーン三世。 お名前を教えて貰えるかい、お嬢ちゃん」 その態度に虫酸が走った。 たかが人間に子供扱いされて良い気分になるはずがない。 それでも会話を打ち切る訳にはいかず、水銀燈は微笑を消して不快感を露わにしながら応じる。 「……そっちの二人のお名前が聞けたら、教えてあげても良くってよ」 そう言うと目付きの鋭い女は躊躇いなく「田村玲子だ」と言った。 少年の方は暫し逡巡し、俯きながら「夜神月」と答える。 二人がすんなりと従った事で少しだけ溜飲を下げ、水銀燈もまた名乗った。 「ローゼンメイデンシリーズの第一ドール、水銀燈よ」 「そうかい、ありがとよ。 で、お嬢ちゃんは殺し合ったりなんかしねぇよなぁ?」 「当然よ、くだらないわぁ」 水銀燈からは、この三人と行動を共にするという選択肢がなくなっている。 この者達が使えるようなら、と一つの可能性として考えてはいたのだが、ルパンの態度によってそれが消えたからだ。 だが三人がこの場所にいるという事は、窓際の望遠鏡で会場全体の動きを把握している可能性がある。 その為水銀燈の目的は、協力者を得る事から情報を得る事に移っていた。 しかしルパンと水銀燈がそれぞれに何か言おうとした、それよりも数瞬早く玲子が口を挟んだ。 「お前は人形なのか?」 「ええ、そうよ。だから何?」 水銀燈は眉根を寄せる。 玲子の声に侮蔑的な響きはなかったが、向けられる視線は無機物に対するものに他ならず――それがルパンの態度以上に、癇に障る。 「作られた目的は?」 「……それは」 言おうか言うまいか、僅かに悩む。 情報を得るのが目的であり、質問したいのはこちらの方。 わざわざローゼンメイデンとして答えてやる義理はない。 しかしここで答えない事は父への不義のようにも思え、水銀燈は正面から答えた。 「完璧な少女になる為よ」 「なってどうする?」 即座に更なる問いが重ねられ、反射的に攻撃しそうになる。 これがアリスゲームの中でなら、既に玲子には無数の黒い羽根が襲い掛かっていただろう。 それだけの怒りを抑え込み、拳を震わせながら答える。 「お父様に、愛して戴くのよ」 「その後は?」 「いい加減になさいッ!!!」 背の羽を膨張させ、感情を剥き出しにする。 それから? 胴体を……未完成な私の体を、今度こそ作って戴くの。 それから? あの真紅が持っていたような、私だけのブローチを戴くの。 それから? 温かな手のひらで優しく頭を撫でて戴くの。 それから? 日溜まりの中で優しく抱き締めて戴くの。 それから? 「美しいね」と優しいテノールで囁いて戴くの。 それから? お父様に、永久に愛して戴くの。 私だけを、私一人を、いつまでもいつまでも愛して戴くの。 願い続けた。 戦い続けた。 そうして何百年も夢見た願いに踏み込まれた事が、耐え難い屈辱だった。 「お父様に愛して戴くのよ、永遠に……その為に私は……!!」 激昂する水銀燈に対し、玲子は表情を僅かも崩さなかった。 そして、淡々と言う。 水銀燈の『願い』に、感想を述べる。 相変わらず、何も感じていないかのように。 「なるほど、まさしく人形だな」 黒い羽の群れが展望室全体に広がり、玲子に向かって一斉に踊り掛かった。 それを玲子は、頭部から伸びた触手の先の刃で払い落とす。 庇うように前に出たルパンも一つの鞘から二本の刀を抜き、玲子まで届いた羽根は一本もなかった。 頭が変形するという気味の悪い姿に水銀燈は微かに動揺したが、それで止まるような激情ではない。 「ちょおっと待った待った!! お二人さん、ここは――」 ルパンが間を取り持とうとするが、聞くつもりはなかった。 羽根の群が龍の姿に変わり、展望室の中を駆け抜ける。 しかし、標的は玲子ではない。 ルパンと玲子から少々距離を取っていた月だ。 それに気付いたルパンが射線に割り込もうとするが、別の角度から飛ばした羽根でそれを阻む。 「坊主、避けろ!!」 「えっ……」 バクン、と月が龍に飲み込まれる。 玲子の態度は変わらなかったが、ルパンの方は明確に動揺を見せた。 「おい、坊主ッ!!」 「安心なさぁい、怪我はさせていないわ」 龍は月を腹の中に抱えたまま、蠢いて水銀燈の横まで移動する。 そこでどう利用してやろうかと思案したのだが、月に対し違和感を覚えた。 羽根に埋もれた彼の顔は見えないが、何やら様子がおかしい。 囚われながら、何の抵抗もしないのだ。 叫ぶでも暴れるでもなく、大人し過ぎる。 「お嬢ちゃんだってこんな事で揉めんのは本意じゃないはずだろ? 玲子の言った事が勘に障ったってんなら、俺の方から謝る。 こっちの持ってる情報も全部渡す。 ……だから坊主を放しな」 「いいわねぇ、その条件」 水銀燈の求めた物が全て手に入る。 計算違いはあったが、結果的には面倒を回避出来たと言えるかも知れない。 「……やっぱりやぁめた」 だが水銀燈は、交渉に応じなかった。 窓から身を投げ出し、羽を広げる。 それを追い掛けるように龍が展望台の外へ、生き物のように波打って流れていった。 「坊主――――ッ!!!」 ルパンの叫びを聞きながら水銀燈は展望台に背を向け、山中へ消える。 ▽ 水銀燈が展望台を離れてから、ルパンの行動は早かった。 窓際に走り寄り、水銀燈の着地点までの方角や距離を確認。 階段を駆け降りながら器用に入り口のトラップを回収し、展望台を出る。 「お前さんが付いてくる必要はないんだぜ?」 かなりの距離を走ってから、初めてルパンが玲子の方を振り返った。 山道の中で背後に向かって走る、器用な移動の仕方だ。 「話がまだ途中だ……しかし急いでいたとは言え、良く私に背を見せられたな」 「約束しただろ、俺達の事は食わねぇって。 そう言や、もう一個の約束はどうするんだい」 玲子から視線を外し、再び正面を向いて山道を駆けながらルパンが問う。 ルパンの回答に満足したのか否か。 玲子は彼の背を追いながら応えた。 「その前に、お前は妙に私を信用しているようだが何故だ?」 「そりゃあ、お前さんが人間臭いからさ」 即答だった。 走る速度は緩まず、ルパンの表情は窺えないままだ。 人間臭さで信用するのなら、人間は信用出来るという事か。 そう問うと、ルパンは「そんな訳ねぇだろ」と否定した。 「お前さん、自分で言うより随分表情があるぜ。 考え方も下手な人間よりよっぽど信じられるってもんだ。 しかも美人とくりゃあ、おじさんクラクラだぜぇ」 「私に性別はない」 「そうかい? 俺には、お前さんがれっきとした女に見えるんだがね」 「……」 ルパンがさらりと何事でもないように告げたその言葉は、玲子の心に刺さった。 どこにあるのかも分からない、概念的な存在である心に――確かに突き立てられた。 ――オギャア ――オギャア 「お前は、変わった人間だ」 「そりゃどーも。それで――」 言いかけて、疾走していたルパンが停止する。 山中の、少し開けた場所に散らばる黒い羽根。 その中心には一枚の紙、そして拳銃が置かれていた。 「こいつは……」 ルパンが紙を取り上げ、玲子もそれを覗き込む。 考えた結果、僕は彼女と行動を共にする事にしました。 僕と貴方は別行動をした方がお互いに効率的に動けると思います。 脅された訳ではありません。これは僕の意志です。 その証拠に、これを残します。 今までお世話になりました。 夜神月 水銀燈が月に同行するよう脅迫しているなら、銃を手放させない。 戦う力を持たない月は、水銀燈の足手纏いになりかねない――それを水銀燈が許容するはずがなかった。 つまり「銃を残して行く」と、月は水銀燈に対し自分の意見を主張しているはずなのだ。 そう見せかけようとしたと考えるには、水銀燈の性格は短絡的過ぎた。 月がマインドコントロールを受けた可能性は残るが、十中八九はここに書かれている通り、自ら決めたのだろう。 何よりルパンには、月がこうし自らて離脱を決意する事に心当たりがあるようだった。 「失敗しちまったなぁ、ったく……」 頭を掻き、悔しそうに呟く。 「追わないのか?」 「今追っかけても、坊主は戻って来ねぇよ。 ああ見えて頑固で負けず嫌いだからよ、決めちまったもんはしょーがねぇ。 あのお嬢ちゃんが癇癪を起こさなきゃ暫くは安全だと思うが……」 ルパンは残された拳銃――コンバット・マグナムを握り締めていた。 やがて紙とマグナムをデイパックに仕舞うと、ルパンはコロリと態度を変えた。 「さーて、お次はどこに行くかねぇ……」 「……もう一つ、質問させて欲しい。 篠崎咲世子が見た夕焼けは、他の夕焼けと何が違う?」 ――あの夕焼けの美しさを、わたしは生涯忘れない。 ――たとえわたしが死んでも、きっとわたしは風になって、あの夕焼けを忘れない。 「そりゃあ夕焼けは夕焼け……違うのは郷愁って奴のせいさ、多かれ少なかれ誰にだってある」 それを引き起こすのは、目に映る景色かも知れない。 鼻孔が捉える香りかも知れない。 耳に入る音声かも知れない。 肌に触れる風かも知れない。 舌を打つ旨味かも知れない。 他郷にあって故郷を懐かしく思う気持ち。 過去のものや遠い昔などに惹かれる気持ち。 「故郷を持たず、生まれたばかりの私には縁遠い感覚……という事だな」 「裏返しゃ、そのうち分かるって事じゃねぇの」 お前さんは真面目過ぎるぜ、もっと気楽にやろうや……そう言ってあっけらかんと笑い、ルパンは歩き始める。 「ほんじゃま、達者でなぁ。 俺様久々に一人でお仕事すっからよ」 質問を終えた玲子にルパンを追う理由はなく、そのまま見送る事にした。 彼が展望台に戻るつもりは無いらしい。 生い茂った樹木の葉が陽光を遮る。 ルパンの赤いスーツが木漏れ日によって斑模様に照らされていた。 その背を見て、納得する。 (そうか、これが『さみしい』か) パラサイトの知性が人間を食う為にあるのでは、『さみしい』。 成長を見守ろうとしていた相手が去って行くのは、『さみしい』。 勿体無い、とは違う。 玲子はルパンの抱く感情の一端を理解した。 先程の『女』という言葉についてもそうだった。 この男は玲子に奇妙な感覚を植え付ける。 それは決して『答え』への遠回りではないと思えた。 「で、約束は?」 「……そうだな、勿体振るのはやめよう。 私は一定の満足を得た」 まだ一つの解答例を得ただけだ。 真実は考え続けたところで分からないだろうし、それでも玲子は考え続けるだろう。 だが確かに、そこには充足感があった。 「私はこの先、人を食わない」 【一日目日中/D-5 山中】 【ルパン三世@ルパン三世】 [装備]小太刀二刀流@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- [支給品]支給品一式、玉×5@TRICK、確認済み支給品(0~1)、紐と細い糸とゴム@現実(現地調達)、 M19コンバット・マグナム(次元の愛銃)@ルパン三世、夜神月が書いたメモ [状態]健康 [思考・行動] 1:仲間を募ってゲームを脱出し、主催者のお宝をいただく。 2:月の事が心配。 3:竜宮レナや園崎詩音の事が少しだけ気になる。 4:ロロ・ランペルージと接触したい。 ※総合病院で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。 緑のスーツの人物(ゾルダ)と紫のスーツの人物(王蛇)は危険人物と判断しました。 ※寄生生物に関する知識を得ました。 【田村玲子@寄生獣】 [装備]篠崎咲世子の肉体、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ [支給品]支給品一式×3(玲子、剣心、咲世子)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~2)、双眼鏡@現実、 ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、 黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ [状態]ダメージ(大)、疲労(小)、数カ所に切り傷 [思考・行動] 0:人間を、バトルロワイアルを観察する。 1:新たな疑問の答えを探す。 2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。 3:正当防衛を除き、人を食わない。 ※咲世子の肉体を奪ったことで、彼女が握っていた知識と情報を得ました。 ※シャナ、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。 ※廃洋館で調達した着替え各種の内容は、後続の書き手氏にお任せします。 ▽ 「痛ぅっ!!」 視界を塞いでいた黒い羽根が消えたと思えば、地面に落下した。 地上から一メートル程の高さで拘束を解かれたらしい。 月が見回すとそこは展望室ではなく、山の中ようだった。 目の前には水銀燈の姿がある。 宙に浮かずに地面を踏み締め、尻餅を着いた月を見下ろしていた。 「気分は如何?」 「……僕に、何の用だ?」 「あら、気を遣ってあげたのに」 口元を手で隠し、水銀燈はクツクツと肩を揺らす。 羽根に飲み込まれてから、月は抵抗しなかった。 人質のように利用される事に口惜しさはあったが、自力で抜け出そうとする気にはならなかった。 自分が何者なのか、分からない。 これからどうすればいいのか、分からない。 何より、ルパンや玲子とこれから―― 「貴方があの二人と一緒にいたくなさそうだったから、連れてきてあげたのよ」 言い当てられ、月は項垂れた。 キラなのかも知れない自分を抱えながらルパンと向き合う事が、耐えられない。 元より自分のせいでルパンは展望台に縛り付けられていたのだから、消えてしまえればどんなにいいかと考えていた。 「でも貴方が使えない人間なら、ここで死んで貰うわ」 いつの間にか水銀燈の手には剣があり、月の首に突き付けられている。 水銀燈が本気だという事は、これまでの彼女の行動から見ても明らかだった。 「貴方は何か私の役に立つかしら?」 挑発的な言葉を投げ掛ける水銀燈に、月は覚悟を決める。 諦めにも似た思いがあった。 「…………あぁ。立つよ」 水銀燈は、続きを促すように目を細める。 「君はさっき、仲間……それと情報が欲しかったんだろ? でも失敗した――だから僕を連れ去る気になった。 抵抗が薄い僕が相手なら、多少乱暴な手段を使っても仲間に引き込めると思った」 「そうね」 水銀燈はあっさりと肯定した。 先程のように逆上されては会話にならないという心配があったが、杞憂で済んだようだ。 「ここから言えるのは、君が余り交渉が上手くないという事だ」 「今回に関しては認めてあげるわ。それで?」 水銀燈は今、完全に優位に立っている。 その為か失敗を指摘されても落ち着いており、月としては好都合だった。 「僕は戦う事は出来ないが、人との会話や交渉は上手くやれる。 それに君が今回得られるはずだった情報だって渡せる。 いずれ首輪を外す方法だって見付ける」 「口では何とでも言えるわ」 「僕なら出来る」 月はルパンと比べれば、ただの高校生に過ぎない。 しかし日本一優秀な、という形容詞を付ける事が出来る。 この殺し合いの中でも有用な人間であるという自信があった。 「僕は君の役に立てる。 その証明に――君はこのままだと、ルパンさんに追われる事になるだろう。 危険人物だという情報を流されるかも知れない。 それを、僕が止める」 月は、覚悟をした。 ルパンと決別する――覚悟を。 現在の位置を水銀燈に尋ねると、展望台から数百メートル程の所だという。 上空から着地したままの場所――ルパンが水銀燈の着地点を確認していないはずがないのだから、ここは既に知られているという事だ。 そして、ルパンの行動力ならもうこちらに向かっているだろう。 彼の能力と展望台からの距離を考えれば、ゆっくりしている時間はない。 月は剣を突き付けられたままデイパックから筆記用具を出し、文章を書き付けた。 握った鉛筆が汗でじっとりと湿る。 平静を装っていても、首に刃物が触れている状態は呼吸一つにも緊張した。 書き終えると黒い羽根が散乱した場の中央に置き、その上に重石代わりにマグナムを乗せる。 「これで、ルパンさんは恐らく追って来ない。 悪い噂を流す事もまず無い」 「これだけで?」 「ああ。僕が一緒に行動しているのに君が危険人物だと噂が流れれば、協力している僕まで危険視されかねない。 それに自分で判断したと言っておけば、ルパンさんは僕の意志を尊重してくれると思う」 つまりは、ルパンの月に対する善意を利用しようとしている。 罪悪感が芽生えるが振り払い、「これをしまってくれないか」と剣を指差すと水銀燈はその剣を霧散させた。 月はそれで漸く立ち上がる事が出来た。 「君は、殺し合いに乗っている――んだな」 「そうよ、お父様に会う為にね」 人を殺す気でいる。 それを恥ずかしげもなく、むしろ誇らしげに言う水銀燈に気分が悪くなった。 しかし『キラ』という名が脳裏にチラつき、彼女に対してよりも自分に対して嫌悪感を抱く。 「僕は、殺し合いなんて馬鹿げていると思ってる……だから、僕は君が人を殺そうとすれば止める」 「何ですって?」 水銀燈が眉間に皺を寄せるが、月は構わず続ける。 「僕は君が生き残る為の協力はするし、脱出の為の努力もする。 でも参加者を減らす手伝いは出来ない」 「……分かったわよ。それでいいわ」 唇を尖らせるような不満気な声だったが、納得していない訳ではないらしい。 そして水銀燈はふと思い出したように、月に確認を取る。 「貴方は頭脳労働担当……そうよね」 「ああ、僕は戦えない」 「それなら、nのフィールドに行く方法を考えておきなさい」 「n……?」 聞き慣れない言葉を聞き直すと、彼女は億劫そうにしながら説明した。 思念で構成された現実世界の裏側であり、誰かの精神の世界。 つまりはそこを経由すればこの会場から出られるのではないか、という話だった。 「それで、今はそこに行かれない?」 「妙なのよ。鏡から入ろうとすると、『入る気が失せている』……」 彼女の言う奇妙な感覚は、本人にしか分からないものだ。 入れない、のではない。 入ろうとする意思そのものが、消されてしまう。 V.V.が彼女に催眠術でも掛けたのだろうか。 「……分かった。今は分からないけど、それについても情報を集めるよ」 月が頷くと、水銀燈は「頼りにしているわ」と微笑んだ。 そのうちに話が過ぎてしまった事に気付き、月は水銀燈を促した。 「そろそろここを離れよう、もうルパンさんが来てもおかしくない」 水銀燈と共にその場を後にする。 最後に一度だけ、手紙を置いた場所を振り返った。 ――さようなら。 【一日目日中/D-5 山中】 【夜神月@DEATH NOTE】 [装備]なし [支給品]支給品一式、確認済み支給品(0~2)、月に関するメモ [状態]健康 [思考・行動] 1:仲間を募りゲームを脱出する。 2:Lに注意する。 3:情報収集を行い、終盤になったら脱出目的のグループと接触する。 4:命を脅かすような行動方針はなるべく取りたくない。 5:僕は……。 ※F-1で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。どの程度の情報が得られたかは、後続の書き手氏にお任せします。 ※ルパンから銃の扱いを教わりました。 【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】 [装備]無し [所持品]支給品一式×3(食料を一つ譲渡)、メロンパン×4@灼眼のシャナ、板チョコレート×11@DEATH NOTE 農作業用の鎌@バトルロワイアル、不明支給品0~2(橘のもの、確認済) [状態]右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、深い悲しみと憎悪 [思考・行動] 1:優勝する。 2:真紅のローザミスティカを得る。 3:夜神月を利用して下僕を集める。 4:3を達成したら、狭間偉出夫を殺しに行く。 [備考] ※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。 ※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。 【黒の騎士団の制服(女性用)@コードギアス 反逆のルルーシュ】 玲子が廃洋館内で調達。 黒の騎士団の団員の制服。バイザーは付属していない。 時系列順で読む Back Blood teller Next 死せる者達の物語――Everything is crying 投下順で読む Back 月光 Next DEAD END(前編) 106 少女が見た日本の原風景 ルパン三世 136 急転直下 田村玲子 137 寄生獣 夜神月 144 銀の邂逅 月の相克(前編) 118 鏡像 水銀燈
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「あなたはどうして私のような・・・・みんなに嫌われる存在に近づいてきたのかしら?」 唐突に水銀燈は真紅に投げかけた。 優しい香りのする水銀燈が入れた紅茶を楽しむ手を真紅は止める。 「あら、私はあなたが嫌いではないわ。あなたのどんなところも好きよ。水銀燈」 「それに本当のあなたをみんなに見せてあげれば、みんなあなたを好きになるわ」 目を細めながら水銀燈を見つめ返した。 伸ばした手は壊れ物を触るように優しく頬をなぞっていく。 「・・・・ッ!!し、真紅ってば本当におばかさん、おばぁかさぁんなんだから!!・・・・でもありがとう。好きよぅ」 「何かいったかしら?」 「だっ、だからあなたのことが大好きっていったのよ・・・・」 「フフ、いい子ね、水銀燈。私もあなたが大事よ。とても愛してるわ」 「そうね、唐突だけど明日くんくん遊園地にいきましょう。水銀燈もたまには庶民の生活を楽しんでみなさい」 「しっ、真紅がそういうなら行ってあげないこともないわ!!」 ―――翌日 「それではいってくるわ。ジュン、ちゃんと迎えにくるのよ?」 「わかってるよ!ちゃんと夕方には迎えにいく。それよりお前ら二人で大丈夫なのか?」 「大丈夫よ。私を誰だと思っているの?」 「そうよ、水銀燈がいれば遊園地なんて簡単に攻略よ!!」 快晴の下、バス停の前でジュンに心配されながら遊園行きのバスに乗り込む。 「何かあったらすぐに連絡するんだぞ!」 「今日のジュン君なんだか過保護じゃなぁい?」 心配しているジュンを不思議に思いながらも流れ行く景色に水銀燈はワクワクしていた。 「次はあれに乗りましょう。あなたでも乗れるわ。水銀燈」 「あら、水銀燈とはぐれてしまったわ」 「まぁ、いいのだわ。そのうちひょっこり現れるわ」 どうやらどこかではぐれてしまったらしい。 少し心配だが、大丈夫だろう。 そう観覧車の前で思った真紅はてくてくと散策を再開した。 「真紅、どこにいるの?」 「この水銀燈を置き去りにするなんて・・・・帰ったらくんくんをズタズタのジャンクにしてあげるんだからっ!」 強がってみるものの真紅は姿を現さない。 次第に孤独感だけだ水銀燈の心を支配していく。 「それにしても本当にどこにいったのかしら?真紅のおバカさぁん・・・・」 周りには遊園地を心から楽しんでる家族の姿。 その中にぽつんと水銀燈は立ち尽くしていた。 「ふぇ・・・・しんくー・・・・どこにいるの?」 「あらあら、どうしたの?こんなに涙をためちゃって」 「お姉さん・・・・だぁれ?真紅どこにいるの?」 少しだけ警戒しながら水銀燈は受け答える。 どうやらこの笑顔がまぶしい人は悪い人ではなさそうだ。 根拠はないがその声とやさしい笑顔を見てすぐにそう思った。 「はぐれちゃったのかな?お姉さんはめぐっていうの、ここで働いてるのよ」 「真紅っていう子を探してるのね。お姉さんお手伝いしてもいいかな?」 「いいわよ・・・・。ひっく」 一方、真紅は水銀燈を探しつつも土産屋を見て回っていた。 「このくんくん人形のキーホルダー素敵ね、水銀燈も好きそうだわ」 「これ、2つ頂くわ。別々に綺麗に包んで頂戴」 そこへ園内放送が流れる。 「迷子のお知らせをいたします。黒いドレスを着た9歳くらいの女の子をお預かりしております」 「赤いドレスを着た真紅さんというお身内の方をさがしております。園内にいましたら・・・・」 「ちょっと、恥ずかしいじゃない///」 慌てて会計を済ませた。 少し息を切らせて真紅は迷子センターにやってきた。 「あの、こちらに水銀燈はいると聞いてきたのだわ」 「あ、家族の方ですね。こちらです」 受付のお兄さんが丁寧にセンター内を案内してくれる。 奥にある部屋に水銀燈はいた。 センターの人であろう女性のひざの上に座り絵本を読んでもらっている。 楽しそうな水銀燈に真紅はホッと胸をなでおろした。 「水銀燈、帰るわよ」 「あっ、真紅!何してたのよ!!」 「家族の方が来てよかったわね、水銀燈ちゃん」 水銀燈は真紅に駆け寄って抱きつく。 真紅は優しくそれを受け止めセンターの女性に会釈をした。 「水銀燈がお世話になったわね。どうもありがとう」 「いえいえ、水銀燈ちゃんはいい子にしてましたよ。一緒にいて楽しかったですので」 センターの女性の屈託のない笑顔に水銀燈を撫でつつ真紅も笑顔で返した。 「それでは、失礼するわ」 「めぐおねえさん、ありがとう。またね」 水銀燈は何度も何度も振り返って手を振っていた。 「水銀燈、一人にして悪かったのだわ」 「もう、いいのよぅ」 手を繋ぎながら観覧車のコーナーへ歩いていく。 二人の順番がやってきた。 ゆったりと観覧車が回転する。 「一人でいたとき、水銀燈は泣かなかったかしら?」 「えっと・・・・その・・・・ちょっと・・・・寂しくて・・・・泣いちゃったわぁ」 少し恥ずかしそうに目を逸らす。 でも嘘のつけない水銀燈は簡単に白状した。 「水銀燈・・・・ごめんなさい。大好きなあなたを一人にして泣かせてしまうなんて私はダメな子ね」 キュッと壊れ物を抱くように真紅は水銀燈を抱き寄せた。 「そ、そんなことないわ。真紅はダメな子じゃないのよぅ!!真紅は優しくてあったかくて・・・・」 「水銀燈が大好きなすごくいい子よ!」 真紅に抱かれながらも腕をブンブンと振って熱弁する。 そんな水銀燈をいとおしく思った真紅はもう一度キュッと水銀燈を抱きしめ、おでこに軽くキスをした。 「本当にあなたはいい子ね、水銀燈」 「真紅、くるしいわ。でも好きでいてくれて嬉しい。ありがとう真紅」 ―――ちゅ 二度目のキス。今度はおでこではなく水銀燈の唇への触れるだけの優しいキス。 何度も何度もそんなキスを重ねる。 「・・・・ん、ん」 水銀燈も目を閉じて真紅のなすがままにされる。 そんな彼女がいとおしくて今度は深く長いキス。 「ふぁ・・・・んん・・・・はぁん」 真紅が舌を絡めると水銀燈もおずおずと小さく舌を動かす。 チロチロと遠慮がちに動かしてくる舌が気持ちよかった。 「んんッ・・・・ぷはぁ・・・・んむ・・・・」 水銀燈がちょっと苦しそうに離れる。 観覧車はまだ頂点にも達していない。 「水銀燈はキスが好きなのね。あなたとのキスとても良いわ」 「真紅とだからしたいのよ・・・・」 水銀燈の言葉が堪りかねたのか、真紅はたまらず水銀燈の首筋を強く吸った。 少し強い、電気が走るような感覚が水銀燈の身体を駆け巡り思わず身体を硬直させる。 「はぁん!!」 「フフ、あなたの首に私の印をつけたわ。これであなたはもう私のものよ。水銀燈」 首筋から唇を離すと頬を艶やかに撫でていく。 水銀燈はその手を取ってほお擦りをした。 「大好きよ、真紅」 その後も何度かお互いを確かめるようにキスを交わし、 観覧車が丁度頂点に達した頃、二人は顔を紅潮させて抱き合っていた。 穏やかな時間が回る観覧車と共に二人の間を流れる。 真紅は本当に水銀燈を遊園地に連れてきて良かったと思っていた。 「水銀燈、あっちに海が見えるわ」 「本当!!すごくきれい・・・・」 水銀燈が真紅の方にもたれかけ、もたれかかってくる水銀燈に真紅は頭を預ける。 優しい時間だけが二人の間を流れていた。 その日二人はジュンが迎えに来るまで楽しい楽しい一日をくんくん遊園地で過ごしたとか。 おしまい
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《2ch》 LV.5 ∧_∧ ( ・∀・ ) ( V ) | | | (_)(_) 中・下級モンスターを率いる統率者タイプ。[制服モララー]がパーティからいなくなると、下級モンスターは統制を失う。 /---- @スキル 【指揮】下級の(Lv.5未満)の魔物のパーティを編成します 【号令】味方のlvを1上げます @タナボタ
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詳細は https //ja.wikipedia.org/wiki/チームS_3rd_Stage「制服の芽」 https //48pedia.org/チームS_3rd_Stage「制服の芽」 Team S:劇場公演 (2009.10.25 初演) M01.恋を語る詩人になれなくて 作詞:秋元 康 作曲:俊龍 編曲:Sizuk M02.合格Kiss 作詞:秋元 康 作編曲:後藤次利 M03.アンテナ 作詞:秋元 康 作曲:藤本貴則 編曲:田口智則・稲留春雄 M04.制服の芽 作詞:秋元 康 作編曲:野中“まさ”雄一 M05.思い出以上 作詞:秋元 康 作編曲:野中“まさ”雄一 M06.狼とプライド 作詞:秋元 康 作曲:吉富小百合 編曲:景家淳 M07.女の子の第六感 作詞:秋元 康 作編曲:関 淳二郎 M08.枯葉のステーション 作詞:秋元 康 作曲:市川裕一 編曲:樫原伸彦 M09.万華鏡 作詞:秋元 康 作編曲:上田晃司 M10.ジェラシーのアリバイ 作詞:秋元 康 作曲:俊龍 編曲:市川裕一 M11.Doubt! 作詞:秋元 康 作曲:伊藤心太郎 M12.仲間の歌 作詞:秋元 康 作曲:佐藤ひろこ 編曲:野中“まさ”雄一 M13.水のないプール 作詞:秋元 康 作曲:俊龍 編曲:Sizuk EN1.楽園の階段 作詞:秋元 康 作曲:春行 編曲:野中“まさ”雄一 EN2.ピノキオ軍 作詞:秋元 康 作曲:横 健介 編曲:武藤星児 EN3.手紙のこと 作詞:秋元 康 作曲:藤井一徳 編曲:辻畑鉄也 歌唱 大矢真那、小野晴香、桑原みずき、新海里奈、高田志織、出口 陽、中西優香、平田璃香子、 平松可奈子、松井珠理奈、松井玲奈、松下 唯、森 紗雪、矢神久美、山下もえ (ユニット) 「思い出以上」 平松可奈子、松井珠理奈、山下もえ 「狼とプライド」 森 紗雪、矢神久美 「女の子の第六感」 大矢真那、桑原みずき、新海里奈、高田志織 「枯葉のステーション」 松井玲奈 「万華鏡」 小野晴香、出口 陽、中西優香、平田璃香子、松下 唯
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あらゆる生き物が眠りにつく午前4時。 ここ桜田家の住人達もその例外ではない。 その一室、桜田ジュンの部屋に座する一台のパソコンも、 今は電源を落とされ眠りについている。 そのパソコンの真っ黒なモニターから突如波紋が広がり、 その中心から一人の少女人形――――水銀燈が姿を現した。 水銀燈(寝込みを襲えばローザミスティカなんてあっという間に手に入るじゃなぁい。) 水銀燈(どうして今の今まで気がつかなかったのかしらぁ…) そう考えたのはほんの数時間前のこと。ほとんど思いつきに近い作戦だった。 水銀燈はパソコンモニターの水面を抜け出し、 誰にも気づかれぬよう宙を経由し、一つの鞄の前に足を下ろす。 目覚めさせることなく破壊するのが目的なのだから、順番など関係なかった。 水銀燈は鞄に手をかける。 がちゃ…という音とともに鞄が開き、中には真っ赤なドレスに身を包んだ少女人形――――真紅が横たわっていた。 水銀燈(ふっ…ラッキーだわぁ。一番手ごわい相手から倒すのは定石だものねぇ…) 水銀燈(でも、楽しみを最後にとっておけないから、そう考えたらアンラッキーかしらぁ?…ま、どうでもいいわね) 水銀燈の背中から伸びる二本の羽がより合わさり、一本の槍を形作る。 水銀燈(これまでの貴方との戦いの数々…アリスになっても忘れないでいてあげるわぁ…) 真紅の胸に狙いを定め、 水銀燈(だから今…壊…!!) その羽の槍を振り下ろそうとした瞬間、 真紅「……ぎ………とう…」 水銀燈(えっ…??) 槍を振り下ろす挙動を止め、水銀燈は耳を傾ける。 真紅「水銀…燈…」 水銀燈(な…た、ただの寝言ぉ…?おどかさないでよねぇ…) 水銀燈(でも…どうして私の名前を…?) 真紅「水銀燈…好き…」 水銀燈(はぁ…!?) 水銀燈(な…なに言ってんのこの子ぉ…!??脳みそまでジャンクになっちゃったんじゃないのぉ…!??) その言葉とは裏腹に、水銀燈は自分の顔が急速に紅潮してゆくのを感じた。 水銀燈(な…なにあたしまで顔真っ赤にしてんのよぉ…!あ、相手は姉妹よぉ!?今さっきまで殺そうとして…!!) 真紅「愛してるわ…水銀燈…だから…」 真紅の口元に全神経を集中させていたせいだろうか。気がつけば水銀燈の視線は真紅の唇を見つめていた。 真紅「キス…して…」 水銀燈は、ごくり、と唾を飲んだ。そこにあったはずの槍も、いつの間にかただの羽に戻っていた。 水銀燈の心の中に、その言葉の通りにしなければ、という感情が走った。 いや、水銀燈自身がそうしたい、と思う感情なのかもしれない。 水銀燈は、真紅の口元に己の顔を近づける。 唇が触れ合える位置まで、あと10cm…5cm…3cm…2cm… そして、あと1cmというところまで近づいた瞬間、ふと真紅の瞼が開かれた。 水銀燈は、はっとして居直った。 真紅「す…水銀燈…!?ここで、何を…」 水銀燈は、その場を取り繕う言葉を探したが、己の顔が再び真っ赤になっていることを隠すことはできなかった。 水銀燈「は…!はは…!!あ、あんた達がどんな不細工な寝顔をしているか見に来ただけよぉ…!!」 水銀燈「ま、また倒しにきてあげるから、覚悟してなさぁい!!じゃあねぇ」 水銀燈は窓を開け、今まさに太陽が顔を出そうとしている虚空に消えていった。 真紅「あっ…!!」 ――――その1時間後。柿崎めぐにあてがわれた病室の窓を開ける。 水銀燈「はぁ…」 めぐ「どうしたの天使さん?溜息なんかついちゃって…顔真っ赤よ?」 水銀燈「め、めぐう!!??な、なんでこんな時間に…」 めぐ「隣の病室の人が急に具合悪くなったみたいでね、お医者達が騒いでたから目が覚めちゃった」 水銀燈「そ、そう…」 めぐ「で、どうしてそんなに顔が真っ赤なのかしら?」 水銀燈「そ、それは…し、真紅達と闘ってきたから…」 めぐ「こんな時間に?」 水銀燈「そ、そうよぉ…」 めぐ「ふぅん…ねぇ、林檎あるけど食べる?」 水銀燈「い、いらないわよぉ…」 めぐにはわかった。水銀燈の瞳が、恋をしている瞳になっていることに。 めぐ(でも、相手は誰なのかしらね?…うふふ。) ――――午前7時。桜田家の食卓。 ジュン「どうしたんだ?やけに嬉しそうな顔して。なにかいい事でもあったのか?」 真紅「別に。何も無いわ」 ジュン「ふーん…ま、別にいいけど」 翠星石(ジュンのニブチンめ、気づかんのですか?あれは…) 翠星石にはわかった。真紅の瞳が、恋をしている瞳になっていることに。 翠星石(でも、相手は誰なのですぅ?…うーん) おわり。